About "AT通信"
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「遠距離バレンタインデー」---著[レゴルス]---画[ちるね&みかん]---
第三項(完)
―――ヴィネル島、ガルム遊技場。
中立地域であるこの島には他国の兵士達が訪れ、少ない平穏の時間を過ごす者が多い。
ここガルム遊技場では、中心の建物に数少ない娯楽としてカジノがあるので、皆賭博で一喜一憂していっている。
そのガルム遊技場の北東に宿屋がある。メールによればそこの付近に差出人がいるはずである。
―――いた。
ネクロマンシヴハットを外して、遥か彼方の海を眺めている。
「クロスラード」
声に反応し、振り向く。
「兄さん!」
声の主が兄と知ると、即座に抱きついた。
「待たせてしまったか?」
「ううん、そんなに待ってないから気にしないで」
「はは、元気そうでよかった」
「兄さんこそ」
二人で互いに頭を撫で回す。
「ああそうだ。クロス、私に何の用なんだ?」
「あ、そうだった」
ようやく離れるクロスラード。
「兄さん、今日何の日か知ってるよね?」
「バレンタインデー、だろ。出口がさんざんアホな事言ってたよ…」
遠い目をしてため息を吐く。
ちなみに言わずもがな、部隊長EXITの事である。
「あはははは。それでね、普通のバレンタインとは違うだろうけど…」
「ん?」
クロスラードは自分の鞄から包装された箱を取り出した。
「これは…?」
「兄さんへのプレゼント…へ、変かな…?」
「変じゃないさ。だがどういう風の吹き回しなんだ? プレゼントだなんて」
「ほら、兄さんウォリアーでしょ? 僕らソーサラーと違って前へ前へと行くし」
「と言っても、私は召喚戦専門なんだがな」
「あ、やっぱりナイトの鍛錬に頑張ってるんだ」
「当たり前だ。歩兵戦なんて柄に合わないからな」
「あははははは」
「まぁでも、ありがとう。開けてみていいか?」
「うん、いいよ」
クロスラードから受け取ったプレゼントの包装を破り、箱を開けてみた。
中身を見た途端、まるで固まってるかのように沈黙した。
「……クロス」
「ん?」
「私の気のせいかな? 箱を開けてみたら赤い小瓶があるように見えるんだが」
「やだなぁー兄さん、ソレが何か判ってるでしょ?」
「……まさかコレは本当に……」
「うん、兄さんの見解通り」
説明しよう。クロスラードから受け取ったプレゼントの中身は……。
ド ラ ゴ ン ソ ウ ル 。
「兄さん、クリ掘り中とかで邪魔が入られると途端に熱くなって突撃するだろうから、コレはその保険」
「……あはははははははは」
「あははははははは」
「クロスー」
「ん?」
荷物からレッドアンガーを取り出すエルクラード。
「歯ぁ食いしばれヘビースマッシュ!!」
「わぁ久々の兄さんのツッコごふぁぁぁぁぁぁっ!」
轟音と共にクロスラードは吹き飛び、そのままベシャリと道路に落ちた。
「さすが兄さん、召喚戦ばっかりしててもツッコミの威力は衰えていない……」
「ウォリアー舐めるな」
倒れて吐血しながら不気味な笑いをするクロスラードの周りに野次馬が集まり始めた。
レッドアンガーを戻し、プレゼントのドラゴンソウルを見つめる。
まぁ……本当にありがとう。クロス……。
後日、戦争でキプ掘り中に来た妨害スカウトを追っ払う時のデッドダウンで発動しました。
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