About "AT通信"
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「ペールライフ」---著[Anly]---画[ちるね&みかん]---
第二項
骨身を軋ませる痛みを抱え、足を引きずりながら路地を行く。
まともに歩行することは難しく、壁に身をこすり付け歩を進ませる。
背に負った鋼の相棒が、情けないといわんばかりに壁を引っかき鳴らしていた。
無様。
この一言に尽きる。
ノーブソックの防衛をしくじり、敗北し、本土を一つ奪われた。
負けたのだ。
だのにこうして、まだ生きている。
正に、無様。
「…くそがっ…」
吐き捨て、毒づいても仕方がない。
怨嗟の向かいは己自身、他ならぬ俺なのだ。
たかが数十ほどの敵兵、抑えられぬ方が未熟なのだ。
もっと力をつけねばならぬ。技を磨かねばならぬ。強くならねば。
「…ペール君?」
女の声で名を呼ばれた。
薄汚い路面に落としていた顔を上げ、目を凝らして女を見る。
夜の帳にまぎれる黒を羽織った女が立っていた。
「…なんだ、また、客でも取り始めたのか?」
「ああ…やっぱり、ペール君だ。おかえりなさい」
薄闇にぼやける視界の先で、柔く微笑む気配がした。
首都アズルウッドの一角に宿を構える、女主人レッセン。
古い馴染みの女だ。
…そうか、こっちに来ていたのか。
知らず着いた先には、使い慣れた女の宿が建っていた。
街の表通りからやや外れた区域にある、宿『静かの森』。
裏通りとも呼べる日陰に佇むそれは、主のなりを反映したかのように大人しい。
ひっそりと、されど毅然として。
日陰に咲くことを誇りとした、悪くない宿だと、気には入っている。
「下は空いてるか?」
「あ、うん。今日はそんなに入りも多くないし、誰もいないかな。急ぎかな?」
五階層ほどに造られた宿の一階部分、フロアとも下とも呼んでいる広間がある。
誰でも自由に出入りができ、軽い飲食にも適したフロアは、似たような連中が集まりやすく気が安い。
「軽い酒と、手早く食える物を頼む」
「…また、戦争?」
「ああ」
どこか物憂げな口調をしたレッセンを無視、手短に応答だけして宿に入る。
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