About "AT通信"
- FEZ内であまり役に立たない情報を、自分達が楽しみながら発信していく「組織」、またはその「情報媒体」です。
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「ただ大切な人と―――」---著[レゴルス]---画[ちるね&みかん]---
第二項
エスセティア大陸、ゴブリンフォーク―――。
攻撃側はカセドリア。防衛側はゲブランド。
とりあえず相手がホルデインじゃない事にほっとするクロスラード。
だが、援軍としてやってくる可能性は否めない。
事実、攻撃側であるこちらの方が人数勝ちしている。
第3国の兵士は、戦争中人数負けしている陣営に援軍として参戦出来る。
もし彼がゲブランドへ援軍として参戦していたら―――。
「クロス? もうすぐ始まりますよ」
女性のスカウトの声で我を取り戻すクロスラード。
「あ…フィーリアさん。すみません、考え事をしていて…」
フィーリア=レイクロス。それが彼女の名だ。
クロスラードと豪が所属している部隊の隊長を務めている。
「…お兄さんの事ですか」
「!」
あっさりと考えていた事を見破られて驚きを隠せないでいる。
「気持ちは分かりますが、今は戦争に集中して下さい」
「……はい」
次の瞬間、鐘が鳴り響いた。
戦争、開始。
三人は真っ先に大勢の味方と共に前線へと向かって行く。
しばらくして、多数の敵影と遭遇した。
「よぉし、暴れるぞーっ!」
「いつも通り行きましょう」
フィーリアと豪の二人が先行して前に出る。
その後方でアイスジャベリンやライトニングスピア等を放つクロスラード。
しばらく経って、前方に召喚獣の姿が現れた。
「[E:6]敵レイス発見!」
「[E:6]敵ナイト発見! 行=数」
「[E:6]敵ナイト発見! 行=数」
召喚獣の発見を知らせるマクロが軍団チャット上で飛び交う。
敵レイスの出現によりほとんどが歩兵で構成されてる前線が混乱し始めた。
クロスラードは二体いる敵ナイトに注目する。
「―――っ!!」
恐れていた事が的中してしまった。
敵レイスの護衛をしている敵ナイトの一人に、彼の兄がいた。
ダメだ……僕には……っ!
必死に敵レイスを護る敵ナイトの兄を見た彼はその場から逃走を試みる。
その時、敵レイスは逃げる彼に狙いを定めていた。
「あ…!」
狙われてる事に気づいて魔法を放つが、敵レイスは彼に向けてアイスバインドを放った。
今の彼はHPが残り少なくなってしまっている。
そんな状態でアイスバインドを食らったら間違いなく死ぬ。
死を覚悟した彼は目を閉じた。
「ぐっ!」
誰かの喘ぐ声が聞こえた。
目を開けてみると、正面に敵ナイト―――彼の兄がいた。
「何をしている! 早く逃げろ!」
「あ……」
「早く逃げろ! クロス!!」
クロスラードは我を取り戻して頷き、その場から逃走していった。
前線から離れた場所で崖に寄り掛かり、リジェネレートを飲み干す。
「兄さんが……助けてくれた……」
息切れを起こしている体で、半分虚ろな目で独り言のようにつぶやく。
戦争での勝利より、弟の命を優先した。
だが、そんな事をすれば彼の立場は危うくなるだけだ。
この戦争が終わったら、彼はどうなるのか―――。
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