About "AT通信"
- FEZ内であまり役に立たない情報を、自分達が楽しみながら発信していく「組織」、またはその「情報媒体」です。
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「3 color's」---著[ルジェリア]---画[ちるね&みかん]---
第三項
首都の道具屋前で再び出会った3人。
「あーー!」
ウェルナが大声をあげ、指を指す。
その先にはこの前の茶髪のスカウトがいた。
「・・・? 誰だお前・・・」
「とぼけるなぁ!」
ウェルナの愛用している杖"エインシャントギフト"でスカウトの頭を叩く。
イリュアンは2,3回ほど叩かれると"・・・あー"と面倒くさそうに口を開く。
「・・・あー。思い出した。口うるさい黒魔術師だったな!」
「むー! どうにかならないのかしらその悪い口!」
「あ・・えの・・・あの・・・。」
道具屋の目の前で言い争う二つの影。
ウェルナの黒いローブが風に靡いてザワザワと揺れる。
そしてイリュアンの茶髪の髪が風に靡いてザワザワと揺れる。
道具屋の主は迷惑そうに顔をしかめていた。
「地味! ボサボサ!」
「黙れよ 黒魔術師!」
そして口を閉じると、
イリュアンはユオンのほうに歩み寄る。
「ユオン。狩り行くぞ。こんな奴に付き合ってらんねー。」
「オホホホ! 残念だったわね! ユオン君はもう私のマイブラザーよ!」
「知るかよ。もともとユオンは俺の戦友だ。」
二人が言い争う中、ユオンが静かに口を開いた。
「イリュアン・・・僕、お姉さんといる。」
「は!?」
呆然とするイリュアン。
嬉しそうな笑みを浮かべるウェルナ。
「お、お姉さんと狩りしたいな・・・。」
「・・・チッ。勝手にしろ。」
ユオンはウェルナのローブの裾を握り、ウェルナの後ろに
隠れるようにしてウェルナを急かした。
だがウェルナは動こうとせず・・・。
「・・・イリュアンとやら。貴方も狩りに来てもらうわよ。」
「・・・は? お前はユオンと狩りに・・・っていてぇな!」
ウェルナはイリュアンの右耳を引っ張り、
無理やり引きずるようにして首都の出口に向かった。
「貴方のそのひねくれた性格直しに行くのよ!」
「は!? 余計なお世話だっつのー・・・ってててっ!」
ぐいぐいとイリュアンの耳を引っ張るウェルナ。
黒いローブ姿でずんずん人ゴミを切り裂いて歩いてゆく。
「どっどこへ行くつもりだ・・・」
「ハンナハンナよ! 黙ってついてくる! はい!」
「は!? 何で・・・っ痛っ!」
途中でウェルナはイリュアンの耳を離したが、
赤い痕が右耳に残った。
「はいっついたね。あんたは30万溜まるまで帰るな。
ユオン君は10万でいいよ?」
にこにことユオンにだけ笑みを向けるウェルナ。
イリュアンが頭をくしゃくしゃといじりながら反論する。
「なんだよその差・・・てか30万なんか俺・・・」
「分かったらとっとと狩る! さあ逝ってらっしゃい!」
「・・・マジで死ぬって。」
「根性と気合よ! さあ頑張るのよ!」
どんっとイリュアンの背中を押すと、
イリュアンは叫びながら崖の下へ落ちていった。
崖の下では、緑色の亜人が群れていた。
オークが短剣を持ったイリュアンをギロッと睨むと、弓を構え襲ってきた。
「あ゛ああああぁ!!!? 死ぬ!死ぬううう!!」
イリュアンの悲鳴とオークが弓を放つ音が聞こえる中、
ユオンはただただオロオロしていた。
「イリュアン・・・ガンバ! 気合よ根性よ! さあユオン君もっ!」
「えええ!? ちょっと待・・・っ ああああっ!!」
そしてユオンも涙目のまま背中を押されて崖の下へ落ちていった。
どすっと背中で着地すると杖を持ったオークの群れが襲い掛かってきた。
・・・そして二人の少年スカウトの泣き叫ぶような悲鳴しか聞こえなくなった。
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