About "AT通信"
- FEZ内であまり役に立たない情報を、自分達が楽しみながら発信していく「組織」、またはその「情報媒体」です。
POWER PUSH EVENT
PICK UP
NOVEL
「3 color's」---著[ルジェリア]---画[ちるね&みかん]---
第四項
崖の上から少年スカウト2人の姿を眺める黒いローブの女性。
シートをいつの間にか広げ、紅茶を飲んでいるウェルナ。
紅茶を一口飲み、ほぅ。と息を吐く。
イリュアンとユオンは崖の下でオークと格闘中。
最後の一匹が地面に声をあげ、倒れると短剣を持ったスカウトは額の汗をぬぐう。
「っ・・・はぁ・・・。ふう。」
二人ともオークから逃げ切るのに必死であまり数は倒せてないが、
エリアいっぱいに居たオーク達はさっきのが最後だった。
空もすっかり黒くにじみ、夕日が沈みかけていたその時、
呼吸を整えると短剣を持った一人の男が叫んだ。
「・・・おい! 黒魔術師! お前本当に俺達を殺す気か!」
綺麗な橙色の空の下に低い声が響く。
「何よー。あんたが弱いだけじゃないの。」
崖の下からずどっと這い上がってくるイリュアン。
レザーアーマーが所々擦り切れてボロボロになっている。
ぼろぼろになり、切り傷がついたレザーヘッドギア。
その姿をじーっと見つめていると崖下から掠れた声が聞こえてきた。
「うぇ・・・ウェルナさん・・・。死ぬ・・・。」
よれよれと崖の下から這い上がって来たボロボロのユオン。
ユオンはまだ戦争に数えるほどしか参戦したことのない新米スカウト。
恐らくあんなに大群のオークと戦うのは始めてだったらしく
逃げ切るので精一杯だったのだろう。
― うーん。
まだあまり二人とも稼げてないみたいね・・・。
橙色の空に夕日も沈もうとしていた時刻。
シートを片付けて、ティーカップを後ろのポケットにしまう。
そして小さくあくびをするとウェルナは、
「・・・んー。日が暮れてきたわね・・・。野宿でもどうかしら」
「え」
「・・・マジかよ・・・」
驚く二人。
ウェルナはにこにこと笑みを浮かべたまま。
「まあ・・・キープ付近で寝てればオークとかは来ないかもね?
スケルトンは来るかもしれないけどね」
ウェルナがふふふと笑った。
本当に寝てる間に襲われたらどうなることやら・・・。
「まあこれも修行の一環だと思って・・・ね?」
「修行・・・」
修行という言葉に目を輝かせるユオン。
イリュアンは呆れて腕を組んだまま黙っている。
「はぁ・・・」
そして結局3人は野宿をすることに。
火を熾しその周りに座る3人。
ウェルナは立ち上がり、荷物を持って水辺のほうに向かった。
「ついてこないでね。水浴びしてくるから」
「・・・誰も見ようとしないと思・・・がはっ」
「イリュアンくん。覗かないでね」
にこっと黒い笑みを浮かべると鼻歌を歌いながら水辺に向かっていった。
イリュアンは頭にぶつけられたコブラを象った杖を地面にたたきつけた。
なんでこんなもの持ち歩いてんだ・・・とぶつぶつ呟く。
澄み切った夜空にぐ?と不似合いな音が響いた。
ユオンはお腹を押さえながらイリュアンを見つめると
「なんかお腹空いたね。」
「ベーコンとパンがあるから分けてやるよ。」
イリュアンがぶっきらぼうにその二つを差し出す。
ユオンは受け取ると笑顔でありがと。とお礼を言った。
ちまちまとパンを食べるユオン。
イリュアンは黙ったまま焚き火の炎を見つめていた。
パチパチと弾ける火花を見て、ふと昔のことを思い出だした。
― このままじゃ・・・いけないな。
そして何を思ったのか短剣を取り立ち上がる。
「? どこか行くの?」
「悪い。気にするな」
そしてキープとは反対方向に行ってしまった。
一人残されたユオンはパンを頬張りながら焚き火を見つめる。
ライトリジェネレートを手に取ろうとした時、一つの影が近づいてきた。
「ただいまー。あれ? イリュアンは・・・?」
「おかえりなさい。分からない・・・。さっき何処かに行っちゃった」
ウェルナは地面に転がっていたコブラヘッドを拾いながら言った。
「ふーん。まあいいけどね」
キュッと瓶の蓋が開いた音が響く。
橙色のその液体をユオンは飲もうとする。
ウェルナはそれに気づくと
「あ、ライトリジェネって甘くて美味しいわよね。
リジェネレートは苦いから嫌」
「ですよね」
「ノベル-AT通信-」作者と作品一覧
- 作者
- 作風
- 作品
※文章を閲覧される場合は、サムネイル画像をクリックして下さい。