About "AT通信"
- FEZ内であまり役に立たない情報を、自分達が楽しみながら発信していく「組織」、またはその「情報媒体」です。
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「3 color's」---著[ルジェリア]---画[ちるね&みかん]---
第五項
「ねぇユオン君」
「ん?」
ウェルナが不意に話しかけてきた時に丁度
ライトリジェネレートを飲み干したユオン。
「どうしてイリュアン・・・だったかしら
あんな性格も悪くて口も悪い奴と一緒にいるの?」
パンを一欠けらちぎるとユオンは焚き火の光を見ながら答えた。
「確かにイリュアンは口悪いかもしれないけど本当はいい子だよ。
ちなみに僕とイリュアンは幼馴染。僕が宿屋の息子でイリュアンは武器屋の息子」
「へぇ、幼馴染だったのね」
「いつも二人一緒によく遊んでたんだけどね、
そのたびに僕が転んで泣いてたところを何も言わずに抱えて家に運んでくれたんだ」
ウェルナは黙って話を聞いている。
ユオンが語るイリュアンはどれもウェルナの見たことの無いイリュアンだった。
「僕がハイド覚えたときイリュアンが笑顔で『よく頑張ったな』って言ってくれたんだ。
そのときはすごく嬉しかった。またイリュアンの笑顔が見たいなぁ・・・」
― ユオン君に笑いかけるイリュアンなんて想像できない。
でも、イリュアンのことを必死に語ってるときの彼の笑顔は本物だった。
それから30分程語り合ったが、イリュアンはまだ帰ってこない。
そろそろ探しに行こうかと思ったが睡魔が襲ってきた。
ウェルナはひとつあくびをすると、寝袋を広げ始めた。
「私はお先に寝るわ。イリュアンなら心配ないでしょ。
ジャイアントに踏みつぶされても生きてそうだしね」
それを聞いてユオンが笑う
「そうだね。イリュアンは僕より強いし。お先に寝ようか」
キープの傍に寝袋を広げて寝る二人。
ウェルナは一応愛杖を隣に置いて寝ている。
後から寝袋に入ったユオンはウェルナより先に寝息を立てて寝ていた。
黒く染まった空に薄く色がつき始める頃・・・
イリュアンはレザーアーマーを真っ赤に染めて戻ってきた。
キープの傍に転がっている寝袋が二つ。
既に寝ている二人を見て胸をなでおろした。
イリュアンが左手に持っている大きな鞄の中には沢山の食料や、
薄汚れた服が詰め込まれていた。
その荷物をキープ付近の地面に乱暴に投げる。
イリュアンはウェルナ達の近くに腰をおろすと、
海の向こうよりもっと遠い彼方から昇ってくる大きな焔を見つめた。
そして彼は静かに座ったまま眼をつぶった・・・
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