About "AT通信"
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「Ring of the Kingdom」---著[Anly]---画[ちるね&みかん]---
第四項
街の中央南区。
都民の居住区でもあるらしく、レンガ造りの民家がぞろぞろと並び立っている。
その一角、商業区との境に設けられた内壁の傍に佇む一軒の家屋。
「静かの森…ここ、のようですね」
軒先に掛けられた、店の看板らしきものを読み取ったジャンヌが言うのだから、きっとここなんだろう。というか、本当に静かの、なんだな。
店の前、石畳の上に設けられた二つの花壇が、どこか自然の名残となって柔らかい。人の手によって管理されてるとはいえ、そこだけは自然のままにされているからだろう。この街は、ちょっと息苦しい。
「石ばっかりだな…」
人の、人による、人のための石造り。人が暮らしやすいようにされているんだろうが、どうもきっちりしすぎていて、俺には合いそうもない。森の湿った土が恋しくもなるな。
あれこれと店周りの観察をしていた所、玄関口から出てくる女がいた。
「あら、お客さんかしら?」
しっとりと落ち着いた声。体格はジャンヌよりもやや大きい程度で、レアとは比べるまでもなく大人の女か。同じような黒いローブをまとっているが、見た目の印象がまるで違う。
「?」
「あー…いや、なんでも」
小首を傾げる仕草。さほど見ていたつもりはないが、気づかれるほど見ていたのかね。
「女将。ペール殿の意向で、こちらの世話になるようにと、先ほど申し付けられたのだが」
お堅い口調でジャンヌが水を取り、話を進めてくれる。この手のことは不慣れ極まるので、まぁ任せておけば間違いないだろう。
一歩後ろに下がり、ジャンヌを前に出させて成り行きに任せる。
「ああ、はいはい。ペール君から、お話、聞いておりますよ」
随分と根回しが早いことで。
「いち、に、さん…あら、三名様かしら? ペール君のお話だと、四名、ということだったのだけど」
後ろを振り向く。
かなり離れた位置に、我関せずといったツラでそっぽを向いてるレアがいた。
「あー、あれも。四人であってるかな」
肩越しに親指で後ろを指しつつ、とりあえずの面子を報告。俺としては四人どころか一人でも構わないわけだが、あれこれと面倒そうなのでガマンしよう。
「そうですか。では、四名様、ということで間違いありませんね。…申し遅れました。私、この宿を仕切らせて頂いている、レッセンと申します。以後、お見知りおきを」
レッセンと名乗った女将さんは、静かな微笑みを一つくれると、ドアに手を掛け招き入れる仕草を取る。
「立ち話も何ですし、どうぞ、宿の中へ」
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